嬉しい瞬間と悲しい瞬間
とある朝。
マルガリータがシオンの所に遊びに来たので何気なく聞いてみた。
やはり結婚式当日に子作りをしていたらしい。
予定日は来年の始めだろう。
それにしてもロウェーナーから妊娠の報告がない。
なのでこちらから尋ねてみた。
ちょっと照れくさそうに話すロウェーナー。
そんなロウェーナーの表情もアリサによく似ている。
シオンとお出かけしたり。
カラムと遊びに行ったり。
従姉妹のジョセフィーヌと遊びに行ったり。
アリサは毎日が楽しくて仕方がなかった。
明日もまた楽しい日が来るのだと思っていた。
しかし。
その日が来てしまった。
イボンヌの誕生日の2日後だった。
間もなくイボンヌは旅立っていく。
アリサにと一緒に暮らししていた分、彼女の危篤は辛いものがある。
別れの瞬間。
家族に囲まれてイボンヌは旅立った。
翌朝、毎朝イボンヌが座っていた席にアリサが座った。
1つ空いた席。
それだけで改めてイボンヌがいないのだと実感させられる。
故人を忘れない事が1番の供養。
そういえば人は2度死ぬらしい。
1つ目は肉体の死。
2つ目は魂の死。
亡くなった人を覚えている人がいなくなると故人は完全に消えるらしい。
だから。
おばあちゃん、アリサはおばあちゃんの事を忘れないからね。
いっぱい優しくしてくれてありがとう。
いっぱいお菓子を作ってくれてありがとう。
アリサはいい子になるよ。
お手伝いもたくさんするよ。
だからアリサの事を見守っていてね。